E-Conception.org アロマの部屋 HOME E-Conception.org アロマの部屋 E-Conception.org アロマの部屋 おやすみ猫の自己紹介 E-Conception.org アロマの部屋 通信販売
E-Conception.org アロマの部屋 ご注文方法
E-Conception.org アロマの部屋 お買い物カゴ
▼HOME▼アロマ▼クレイ▼手づくりコスメ▼布ナプキン▼クリスタル  E-Conception.org アロマの部屋 サイトマップ
E-Conception.org アロマの部屋 実験記録、体験談 E-Conception.org アロマの部屋 よくある質問と回答 Q&A E-Conception.org アロマの部屋 エッセイ E-Conception.org アロマの部屋 メルマガ E-Conception.org アロマの部屋 自己紹介 E-Conception.org アロマの部屋 通信販売
E-Conception.org「アロマの部屋」:福島麻紀子のエッセイ/双子育児日記「ダブル・トラブル」


乳やり日記




あなたたちが生まれてからというもの、わたしは乳をやることしかしていない。

おなかの中でもぞもぞ動いていた物体と対面した瞬間は、あなたたちをこの世に迎え入れてくれたすべてに感謝したい気持ちでいっぱいだったのに、なんて可愛い子たちなんだろうって、感動して心底うれしかったのに、その後のわたしときたら、乳やり以外なんにもしない怠惰な母親。

おむつ替えから寝かし付けまで、なんでもやってくれるダディがいるから、思い切り甘えているんだけど、そんなダディはわたしのおっぱいにちょっと嫉妬なんだそうだ。




はじめてあなたたちに乳を与えようとしたとき、出るはずもないと思っていた液が自分の乳首からにじみ出ているのを見て、動物の生態システムに驚いた。その液を「あって当りまえ」のように全身で吸い取ろうとするあなたたち。生まれて何時間とたっていないのに、なんと力強くむしゃぶりついてくることか。

4日めに白い乳液が出てくるようになるまで、あなたたちはいつもお腹を空かせてわめき、新生児室の看護婦さんの悩みの種だった。でも、お腹が空いているんだから、仕方がないよねえ。

一方、わたしの乳首は、生命力旺盛なあなたたち二人にいつもしゃぶりつかれて、ひどく割れ、荒れてしまった。それでもあなたたちは血がにじみ出る乳首から、ありったけの液を搾り取ろうと、かさぶたまでも吸い取ってしまうのだった。

乳液が出るようになるやいなや、わたしのおっぱいは供給過剰状態になって乳腺炎を起こした。悪寒と高熱が周期的にやってくるのだが、あなたたちの食欲も周期的にやってくる。高熱と授乳時間が重なる時は辛かったけど、この乳をあなたたちに吸ってもらわないと、また乳腺炎は悪化する。ここに親子のギブ・アンド・テイク関係が成立したわけだ。わたしは一方的に「やる側」ではなく、「やってもらう側」でもあるのだ。

病院ではダブル・フィーディングを教えてもらい、というか、半ば強制され、おっぱいのあげかたもよく分からないうちから、両脇にあなたたち二人を抱えて両方のおっぱいに吸い付かせた。ただ一人の子供でさえ、授乳のテクニックをマスターするまでには時間がかかるところ、このダブル・フィーディングは更に慣れとテクニックと自信が必要で、精神的にわたしを圧迫した。

看護婦さんに「あなたがやっていることはとても大変で難しいことなの。女性だからって、母親だからって出来ることじゃないのよ。だから、自分を責めないで」と励まされ、ベビーブルーもあいまって涙が止まらなかった。

自宅に帰ると、ダディがダブル・フィーディング用の台を作ってくれたけど、授乳のたびに固定されるのが精神的に重荷に感じられるようになってきた。おまけに、二人分のおっぱいを製造して、同時に供給するには、ものすごいエネルギーが必要とみえて、ダブル・フィーディングが終わるたびに全精力を使い果たしたかのような脱力感、疲労感に襲われるのだ。二人同時に吸い付いてくるから、リズムをあなたたちに合わせることもできず、受動的に吸い付かれる「授乳マシーン」になりさがった気がして、ますますダブル・フィーディングが不自然に感じられてきた。そこで、3週間めから母乳とボトル・フィーディング(ミルク)とを混合させ、シングル・フィーディングに切り替えることにした。

乳量の需要供給が安定してくると同時に、乳首の痛みや乳腺炎も落ち着き、無理なダブル・フィーディングからも開放されると、ようやく授乳を楽しめる境地に入りつつあった。




おっぱいを吸い取っているあなたたちの横顔を眺めるのは、なんとも楽しい。
最初は大きな瞳をさらに大きく見開いて、肩で息をしながら、頬を紅潮させて、無我夢中で吸い付いてくる。が、ものの10分もたつと次第に眠くなって、目がうつろになり、とろとろしてくる。足をくすぐったり、頭をなでたりと刺激して、眠りこまないようにと気を使うのだが、それも時間の問題。

動きの止まった口を乳首から離すと、そこには新宿の裏通りでヘロヘロになった酔いどれオヤジのミニチュアがいて、ゲップをさせようとすると、面倒臭そうに片方だけ薄目を開けて「ういっぷ」とやる。さっきまで乳を求めて身体じゅうを緊張させてビービー泣いていたのに、あっという間にふにゃふにゃの骨なしくらげになってしまう。おまけにこちらまで、眠くなるから不思議。おっぱいには麻薬でも入っているんだろうか? 病院では部屋の隅で、よく3人して、こっくりこっくり居眠りしていたっけね。

せっかくお腹いっぱいで眠くなったのに、寝かしつけようとするとまた寝てくれなかったりする。ダディ自作の電動ベビーベッドのおかげで寝かしつけではずいぶん楽しているけれど、それでもあなたたちにも「眠りたくない日、時」があるらしく、いつまでもグズグズ言ってイライラさせられることもある。

こうなると、親子の根競べ。おむつもゲップもお腹もフトンも問題なければ、運動したいんだろうと勝手に解釈させてもらって、思い切り泣かせてやる。好きなだけ泣いたら、疲れ果ててゆっくり眠れるだろうって。いい加減な親だね。

そんなこんなを1日数回繰り返して、そんな日をこれから何日繰り返すのだろう?
そう考えると、気が遠くなって「早く大きくなって欲しい」ともおもうし、いつまでもこの大変だけどささやかな楽しみを味わいたい気もする。




やがて、あなたたちが一人立ちしていく時、その時も今のこの乳やりの瞬間を、わたしはきっと鮮明に覚えているんだろうな。そして、「あんなに小さかったこの子たちが…」という感慨に襲われ、成長してくれた喜びとともに、巣立っていってしまう寂しさとが胸を去来するんだろうな。 今からその瞬間のことがとても鮮明に想像できてしまって、今から涙があふれでてくるよ。

実をいうとね、わたしは、あなたたちが自分の子供だという実感があまりないんだ。 天から授かった「ひとたち」だから、一人立ちできるようになるまで、そばにいて出来ることをさせてもらおうって思うだけ。まあ、大したことは出来ないけどね。


でも、あなたたちがここに来てくれて、とてもうれしいよ。
こんなに可愛い子が二人も来てくれて、とってもうれしいよ。
私たちのところに来てくれて、ありがとう。
いい加減な親だけど、これからもよろしくね。




2000年08月09日:福島

★→エッセイ インデックスに戻る



Copyright 1996-2016 © E-Conception Pty Ltd